blog non grata

人生どうでも飯田橋

ハッピーエンド

浪人していたときの話。その日はかなり寒かった。センター試験直前のころだったと思う。本当にセンター試験が全科目、苦手でどうしようもなかった。精神的にかなりまいっていた。そんなとき、なんとなくandymoriの「ハッピーエンド」を聴いていた。

夕暮れの井ノ頭公園で

コーラの空き缶蹴飛ばして

もうだめかもしれないと

こぼした君の横顔すごくきれいで

 

この歌詞を聞いたら、なんだか急に感傷的な気持ちになって、夕暮れの井の頭公園に行きたくなった。コーラの空き缶を蹴り飛ばしたくなった。もうだめかもしれないと、こぼしたくなった。そしてどうしようもなくうずうずして、突発的に縁もゆかりもない井の頭公園に向かうことにした。片道1時間以上はかかったと思う。道中ずっとandymoriの1stを聴いていた。太陽が沈むか沈まないかくらいの時間、井の頭公園に着いた。早くしないと夕暮れが終わってしまう。なぜか最初は自分でコーラを買ってくるという発想がなかった。しかし、そんなに都合よくコーラの空き缶は落ちていない。けっこう公園内を探し回ったけれど、案の定落ちてなかった。そうこうしているうちに辺りはすっかり暗くなり、夜になってしまった。ここまで来たのにこのまま帰るわけにもいくまいと思って、やっと自分でコンビニまで行って、コーラの500缶を買えばいいと気づいた。しかし寒くて全然コーラが進まない。真冬の公園でコーラの500缶を飲むなんて普通の人のする行為じゃない。どおりでコーラの空き缶なんて落ちてないわけだ。凍えながら少しずつ飲んでたら、ついゲップをしてしまった。その瞬間、自分のしていることがいかに阿呆であるかに気づいた。歌詞に出てくるシチュエーションでセンチメンタルな気分になりたくて、1時間かけて移動して、コンビニで買ったコーラを凍えながら飲む、あまりに滑稽だった。「こうやって感傷に溺れる自分も悪くないな」と思いたくて行っているだけだった。本当に阿呆だ。自分のしている阿呆さに対して、情けなさに対して、試験が迫っているプレッシャーに対して、涙と、変な笑いが止まらなくなった。真冬の夜の公園でコーラ片手に凍えながら1人泣きながら笑っていた。これが僕の唯一の井の頭公園の思い出。