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人生どうでも飯田橋

 クリスマスの朝、ジャック・ベッケルの『穴』を観た。5人の囚人がひたすら穴を掘って脱獄を目指す、それだけの映画だ。脱獄方法もなんのひねりもない。音楽も全くなく、ただ5人の男たちが協力して毎晩少しずつ穴を掘る様子が淡々と描かれている。彼らは同じ目的のため、固い絆で結ばれ、見事な連携で穴を掘っていく。脱獄劇なのにスリルも全くない、至ってシンプルな映画だ。

 穴を掘り終え、脱獄を決行する朝、囚人の一人の告訴が取り下げられる。釈放されるのだ。もはや彼に取っては脱獄する意味は無くなった。しかし、釈放されたとしても、当然に穴を掘った跡は残る。穴によって自由を得るはずだったのに、穴によってかえって自由を束縛されてしまうことになった。苦悩の結果、ある決断を下すことになる。でも彼の判断は仕方がなかったのかもしれない。そういう映画だった。