blog non grata

人生どうでも飯田橋

洋食屋

 おそらく2年以上ぶりに京都の行きつけだった洋食屋に行った。店主は40代半ばくらいのスカートの澤部渡似の人で、接客業のひととは思えないほど愛想が悪い。店内はいつもインディーロックやプログレ、ジャズといった洒落てる音楽が流れる。Built To Spillが好きになったのもこの店で流れてるのを聴いたのがきっかけだ。置いてある本のセンスもいい。多くの小説や哲学書で溢れている。岩波文庫が並ぶが、それがただのファッションではないのは、カレル・チャペックの『ロボット』やミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』などのラインナップを見れば一目瞭然だ。

 今日がコロナ以降では初めてだった。おそらく店主は典型的か、あるいは非典型の左翼だと思っていたので、コロナ対策がかなり厳重であるか、ほとんどコロナ対策に無頓着であるか、のどちらかだと思ったが、前者だった。検温こそないものの、かなり頑丈なパーテーションがテーブルの真ん中に置かれている。

 他のお客はいなかった。店主は相変わらず無愛想で、店内に2人ぼっちだと流石に緊張する。お冷やをテーブルに置いた時の水が撥ねて僕の靴はびしょ濡れになった。店内は、Stella Donnellyの寂しげな声以外ほとんど無音で、緊張感がより高まっていった。

 いつも通り「今日のメニュー」を注文した。今日は目玉焼きハンバーグだった。相変わらずべらぼうに美味しい。美味しくてごはんが進む上に、緊張も相まって一瞬で平らげてしまった。数学の試験中に先生に解いている過程を覗かれているような、ばつの悪い感じがある。そして最後は自家製のプリン。これまた相変わらず格別の味だ。久々の洋食屋への「単騎遠征」は緊張したけれどかなり満足であった。