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人生どうでも飯田橋

3月19日

年度の変わり目の時期だから、この時期の思い出はたくさんあるけど、やはり高3と浪人の2度の大学受験の経験が一番の思い出だ。2度の京都大学の入試本番と合格発表や、大雪と東横線の事故で開始時刻が大幅に遅れた慶応文学部の試験など色々思い出される。その中でも特に、2013年3月12日、京大の不合格を知った2日後に受けた横浜国立大学の後期試験のことはずっと忘れられない試験だと思う。とにかくあの時の横国は異様な空間に感じられた。

数学か英語の1科目だけ選択するタイプのテストで、センター試験と2次試験の割合はほぼ1:1だったと思う。数学が得意だった僕は数学を選択した。京大落ちたら浪人すると決めていた(当時京大は後期試験がなかった)から、完全に傷心中だったけど、一応受けに行った。試験内容まではよく覚えてないがほとんど満点近い点数をとったと思う。センター試験は72%くらいしかないけどそれをカバーできる十分な点数を取って合格した。1998年FIFAワールドカップグループDで、他会場の結果から敗退を知りながら、虚無の表情で淡々とブルガリア代表相手にゴールを量産するスペイン代表と同じ気持ちだった。

国立大学の後期試験は、前期試験で不合格だった人しか受けない。後期試験の方が基本的に難易度が上がるので、志望校を下げるのが普通だ。前期横国を受けた人もいるが、多くは東大や京大、東工一橋を落ちた人たちが受けることになる。長い時間努力してきて挑んだ第一志望を不合格になり、夢破れた僅か数日後に、第一志望でもない大学の試験を受けに一堂に会する。

試験会場はガラガラだ。多分出願者の3分の1くらいしかいない。晴れて第一志望を受かった人は当然に受けに来ない。第一志望を落ちたとしても、すでに私立で早慶に受かっていればわざわざ受けない。僕のようにどうせ浪人するつもりだったら、出願はしていたものの気乗りせず来ないという人もいる。

長い冬も終わり春らしい陽気の中、夢破れたばかりのものたちが集う消化試合。同い年の受験生の9割以上はもう試験なんてとっくに終わっている。高校の卒業式も終わってる。最後の最後まで一緒に残った国立組の中で、受かった人たちは浮かれいて、落ちた人だけがここにいる。試験会場には最後の最後の敗者たちだけが集う。本当はここに行きたいわけじゃないんだけどな、と思いながらみんなが受ける。妙な連帯感とまでは言わないけど、教室のみんなどこかゆるやかな仲間意識があったと思う。お前らよう頑張ったな、と互いに無言で労っていた。最高の結果を得られなかったけれど、この場には来た。前期試験までの勉強で憔悴しきって、ほとんどなくなった搾りかすみたいな知識を最後の最後にフル回転させに来た。そんな人しか集まってない。高校生最後のイベント、物事全てはうまくいかないことを認識し、しかしそれでも前を向き、大人になるために「妥協」ができるかどうかが試される試験だった。僕は結局「妥協」はできずに大人になれなかったわけだけど。